上半田 山車祭 ちんとろ舟

仕事やプライベートで山車まつりに出かけるたびに撮影していた使う予定のない写真がたまってきたので、写真を掲載するついでに、知多半島と山車の祭礼について思うことを書いてみます。

 

知多半島に春の訪れを告げる山車まつり

知多半島では、4月になると週末ごとにあちらこちらで山車まつりが行われます。

仕事や買い物などのために車で移動していると、祭囃子が遠くから聴こえてきたり、通行止の予告看板に出会うこともしばしば。

山車は、「舵」を切ったり、縄をかけたり、はっきりと船の形をしていたり、巻藁舟(ちんとろ)があったりと、廻船が盛んだった知多半島らしく、海運や船乗りの文化の影響が見てとれます。

武豊 天王丸

ちんとろ舟ちんとろ舟

 

例えば武豊町の富貴市場区がもつ天王丸は、舟が乗ったようなデザインになっているし、常滑市や半田市では、一年の無事を願って、津島神社由来の天王祭と同じような形の舟形の山車、「ちんとろ船」が水面浮かびます。まだ見たことはないのですが、南知多には船型の山車が現存しており、内海地区には神楽船というちんとろ船とはまた違った船と提灯のお祭りがあるそうです。

知多型の山車の特徴として、車輪(ゴマ)が山車の内側にあったりするのも、もしかするとそうした舟のイメージが影響しているのかもしれません(※これは完全に想像です)。

知多半島の歴史と山車祭の関わり

祭囃子を聴き、からくり人形の演目を見ながら、伊勢湾を遡ったり、あるいは木曽川をつたって半田市との縁も深い犬山まつりや津島の天王祭との関係を想像したり、各地区ごとの山車の譲渡のことを考えたり…。碧南など衣浦港の周辺まで含めて新しく作った時に古い山車を売ったり、地域の山車が欲しくなって買ったりといった売買が結構あったらしいです。
最近でも新たな山車が新造されたり、長らく曳かれていなかった山車を曳き回すようになったりという話を時々耳にします。なぜこんなに知多半島の人たちは山車のことが好きなんだろうか。
生まれた土地とは地縁と途切れた生活をしているので、外側から見て感じるだけですが、毎年繰り返し訪れる山車祭を中心とした様々な行事が年間を通して行われる中で、上の世代から下の世代に祭りのお囃子やしきたりを伝えたり、地域の人たちの世代を超えたつながりを作り、地域の誇りとなっているのは間違いなさそうです。

三番叟

山車祭の風景山車祭の風景

 

山車祭には、酒を飲んで騒いだり、子供達が走り回り、投げ餅や屋台を楽しむような「ハレの日」として浮かれるための祭の面と、神前への奉納や受け継がれるお囃子や儀式を通じて、1年の感謝と無事、神への奉納や厄払いと繁栄の祈りのこもった神事という2つの側面があり、それが同時に行われ、交錯します。

伊勢湾や衣浦港などにある愛知県の古くからの港町には、製塩や木綿、酒や醤油、味噌や酢などの製造業が盛んな、船積みでの売買を行う廻船問屋で栄えた地域があります。そうした地域は経済的に発展し、神社仏閣が多く、また山車祭などの特徴的で華やかな祭が残っていることが多いように思います。近隣の地区と競うように発展していった山車を中心とした祭礼には、地域間の文化的なつながりとともに、当時のこの地域の経済力や技術力が反映されています。豪華な刺繍の施されたいくつかの幕や精密かつ立体的に掘られた彫り物などの装飾が飾られた山車や衣装(看板)、趣向を凝らしたからくり人形などが、当時の繁栄や活気を物語っています。

山車祭礼

神事山車と境内

干ばつや嵐、台風などの天候などに左右され、自然の力を恐れ、神頼みにならざるを得ない農業や海運業を暮らしの基盤とする人々の祈りや感謝、希望などに思いを馳せつつ、中世から今までの知多半島の物流のことや昔の暮らしぶりを想像するのも楽しいものです。

江戸や明治以前の歴史の層が、その土地の風土で取れるものや地政学的に手に入りやすいものに根ざしたものとなっていて、必然性のある土地の特産品や風習を育む土壌となっているのだと思います。
明治の層、昭和の層(戦前や戦後の高度成長期)や平成の層、あるいはITや映像などによるバーチャルな情報の層(映画やゲーム、アニメの影響、鉄腕アトムやAKIRAやブレードランナーやポケモンGoとかテクテクテクテクとか刀剣と歴女などなど…)が多層的に折り重なって、今の街並みや暮らしに現れています。
そういう面でも、知多半島は少し古い昭和的なものが割と色濃く残っていたり、遥か昔からの六古窯のひとつでもある常滑があったりと、色々な歴史の地層を見ることができて、面白い場所だと思います。

知多半島の山車祭情報(半田市・常滑市)

のぼり旗提灯

そういう難しいことを抜きにしても、毎年の春の訪れと、夏の予感みたいなものが味わえて、伝統的な祭りはやはりいいなぁと思います。

4月からゴールデンウィークにかけては、毎年知多半島の各地で山車祭が行われています。
ご興味を持った方はぜひ足をお運びください。

山車祭

◎制作させていただいた知多半島観光圏協議会「タビチタ」ホームページでは、各地のイベント情報の一環として、春の祭礼情報が掲載されています。

【半田市 半田の春まつり2019】
https://tabichita.com/event/4505

【常滑市 常滑の春まつり2019】
https://tabichita.com/event/453